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ニシンは「魚兆」か「魚非」か

安政の頃、松前から江差をめざす二人の旅人が、渚を歩いて五勝手に近づいていた。
細い道を挟んで、山側も海側も、さおにつるされたおびただしいニシンだ。風に吹かれてすさまじいばかりの魚臭が漂っている。
「聞きしにまさるニシンの数だ。ところでお前さん、ニシンという字はどう書くか知ってるかね」
と、一人が物知り顔に、もう一人の相棒に聞いた。
「知ってるとも、松前の国ではニシンは『魚非』と書くのサ」 もう一人の男は流木の枝を折って濡れた砂地に得意そうに書いた。
「いや、それがちがうのさ、松前の国ではずうっと前から本当は『魚兆』と書くのサ」
と、物知り男も木の枝を拾って砂地に書いた。
「いや違う、俺の方が本当だ」、「いや違う」
二人の男は、ニシンの字をめぐって、砂地にしゃがみこんで口論を始めた。しばらくすると、二人の姿をけげんそうに見つめている子供たちに気がついた。
「坊主、お前たちニシンという字はどう書くか知ってるか?」
「知ってるよ」
「じゃあ、『魚非』と『魚兆』と、どっちが本当だ」
「どっちも本当だよ。江差では、ニシンは米と同じだから魚に非らずということで『魚非』と書くこともあるし、一回網をあげると、万、億、兆も取れる魚だから『魚兆』とも書くョ」
「参ったナ、お前たいした坊主だ」
「ちがうョ、寺小屋で習ったから、江差の子供はみんな知ってるョ!」
と子供たちはバラバラとはだしで渚を駆けていった。

「北前船 -日本海文化と江差-」より

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