観音さんの日

「繁次郎。人間にも種類があってな。ヒト、ビト、ビビトとそれぞれ違うんだぞ。
 俺みたいに人間を使う身分の者はヒト、人に使われないで、女房子供をアジカッテ(養い育てる)いる者はビトだ。
 てめぇたちのように人に使われて、一生ウダツのあがらない者をビビトというんだ。分かったか」
親方になめられた繁次郎、どうも腹の虫がおさまらない。
いまにみていろとシッペ返しの機を狙っていた。
ある日、親方が日頃から信仰している、お祖師様(日蓮上人)の日と称して仕事を休んでいるところへ、まかり出たこの男
「親方。実は俺も観音様を信心してるんだども、
 どうだべ、観音様の日だけ俺にも休みをくれられねぇべか」
「ほう。見かけによらねぇ信心家だな。
 良いもなも、観音様の日はゆっくり休めや。
 これからも信心を怠けるんじゃねぇど」
その翌日、繁次郎は早速、観音様の日と称して一日中寝ていたが、そのまた翌日も同じことをいって寝床から動かない。
怒った親方が、
「繁次郎。休みは観音様の日だけといったでねぇか」
この時繁次郎、少しも騒がず
「親方。きのうも、きょうも観音様の日だでば、あすとあさっても観音様の日だ。
 観音さんというのは三十三体あるんだ。毎日休みもらっても、まだ親方に二日の貸しがあるんだてば・・・」

プリンタ用画面
前
キンキラキン
カテゴリートップ
民話「江差の繁次郎」
次
米三俵は背負う