令和8年第1回江差町議会定例会の開会にあたり、町政執行への所信を申し上げます。
令和8年度予算は、町長改選期にあたり、当初予算を、いわゆる「骨格予算」として予算編成を行ったところですが、継続的な取り組みに配慮し、住民サービスを低下させることのないように留意するとともに、令和7年3月に策定された「第6次江差町総合計画後期基本計画(デジタル田園都市構想総合戦略)」を前に進めていくことを基本とし、既に計画が進んでいる新道の駅整備事業を着実に実行に移すため必要な予算措置を行うことといたしました。
また、町民の生活に大きな影響を与えている食料品などの物価高騰対策につきましては、令和7年度補正予算で繰越事業として措置した「みんなの商品券事業」や「省エネエアコン導入促進事業」などの事業を実施するとともに、今後も、国や北海道が実施する対策を踏まえて必要な対応を行ってまいります。
(1)重点施策について
これまで、「誇りある暮らしを未来へ紡ぎ、みんなでつくる自分たちごとのまちづくり」を目指すべきまちの姿として掲げ、人口減少・少子高齢化という課題に対し、雇用機会の創出や暮らしやすい環境を整備することで、人口の流出を抑制し、若者層の定住促進を図ることを目指し、まちづくりを進めてきました。
こうした考え方を踏まえ、令和7年度で重点施策として掲げた「地域の活性化を目指した取り組み」「再生可能エネルギーに対する取り組み」「住民生活の向上と安全・安心のまちづくり」を引き続き進めてまいります。
はじめに「地域の活性化を目指した取り組み」に関してです。
(仮称)道の駅「かもめ島」整備事業に関しましては、昨年、DBO方式により施設整備及び運営を一体的に行う事業者グループを決定し、現在、建設予定地にある開陽丸管理棟の解体工事が進められているところです。令和9年度のオープンを目指し、事業者グループと密接に連携を図りながら、多くの人に親しまれる道の駅となるよう事業を進めてまいります。
ふるさと納税につきましては、財源の確保の面だけではなく、地域の生産者・事業者の育成、新商品の開発、商品の販路拡大等にもつながる取り組みとして、引き続き、生産者・事業者と連携を深め、産業振興や経済の好循環につなげてまいります。
2つ目に、「再生可能エネルギーに対する取り組み」です。
昨年7月に、檜山沖が再生可能エネルギー海域利用法に基づく「促進区域」に指定され、今後、事業者公募のフェーズに進んでいくこととなります。12月に、檜山沖洋上風力発電事業による江差町への経済波及効果を最大化することを目的に、地域内連携組織として「江差町洋上風力推進プラットフォーム」を立ち上げたところであり、官民連携しながら、地域の産業振興や新たな産業の創出、企業・団体間のマッチング、観光振興、人材育成、雇用創出等に取り組んでまいります。
3つ目は、「住民生活の向上と安全・安心のまちづくり」です。
災害時に緊急情報等を収集し、迅速かつ円滑に、携帯電話や戸別受信機等を通じて住民へ伝達する「防災情報伝達システム」について、令和8年度から運用を開始いたします。町民の安全・安心につながるよう適切な運用に努めてまいります。
子育て環境の整備に関しましては、老朽化が進んでいた日明・水堀の両保育園を統合し、新たに「たばかぜ保育園」を開設します。たばかぜ保育園では子育て支援センター機能を維持し、また、かもめ保育園では新たに「こども誰でも通園制度」による利用の受入れを開始するなど、引き続き、子どもの育ちの応援と子育て世帯の支援の充実を図ってまいります。
(2)産業基盤の維持・強化のまちづくり
<未来への礎をつくる町政の推進>
観光によるまちづくりは、歴史的・文化的資源が豊富な当町にとってあらゆる分野で重要であり、これらを軸とした誘客を推進してまいります。
日本を代表する民謡「江差追分」や重要文化財の「中村家」などを構成文化財とする「日本遺産」を軸とし、関連団体との連携をより強固なものとしながら、官民一体となった観光振興に取り組んでまいります。
また、新たな道の駅の開業を視野に入れながら、交流人口の増加と観光消費の拡大を図ってまいります。
二次交通対策としては、函館空港から江差町・厚沢部町・上ノ国町へダイレクトにアクセスする乗合タクシー「かもめ号」について、運行期間を拡大しながら継続してまいります。
主要観光施設である開陽丸記念館につきましては、現在、休館中ですが、新たな道の駅の開業を見据え、展示リニューアルの計画を進めてまいります。
地域の課題を解決し、地域の活性化を図る上で、大学や企業との連携も重要な役割を果たしています。令和7年度には、北海道教育大学函館校、公立はこだて未来大学に加え、新たに小樽商科大学との包括連携協定を締結しました。事業承継等の課題への対応のほか、地元で高等教育に触れる機会の創出を図るためのサテライト教室の設置などに連携して取り組んでまいります。
企業との連携では、サツドラホールディングス株式会社との連携により、福祉・健康・交通など多岐に渡る、行政だけでは作り上げることができないサービスを提供することができております。DBO方式による新たな道の駅の整備及び運営もあわせ、民間活力の導入、官民連携を積極的に進めてまいります。
<地域産業力の強化と地域経済の活性化>
一次産業は、地域の経済・文化を支える「まちの礎」です。
生産資材の高騰や気候変動による生産量への影響など、基幹産業である一次産業を取り巻く環境は非常に厳しい状況にありますが、事業者が将来にわたり夢や希望を持ち、安定した経営が続けられるよう取り組みを進めてまいります。
農業では、「農業競争力強化農地整備事業」や「スマート農業」を推進し、生産効率の向上を図るとともに、農業経営の安定化に向けた各種支援事業を実施し、将来にわたり持続可能な生産基盤・体制の構築を図ってまいります。
林業では、森林の有する多面的機能が持続的に発揮されるよう、森林環境譲与税を活用し、適正かつ計画的な森林整備を進めます。
有害鳥獣対策は、命がけでヒグマの対応にあたられる江差町有害鳥獣被害対策実施隊員の処遇改善を図るとともに、市街地への侵入を未然に防ぐため、ゾーニング計画に基づく管理を進めてまいります。また、誘因樹木等の伐採や町民に対する家庭菜園、生ごみ等の適正な管理を徹底するよう周知し、人的被害・農業被害の未然防止に向け、実施隊員や関係機関との連携を密にしながら対策に万全を期してまいります。
水産業につきましては、漁業生産の拡大と経営の安定化を図るため、回遊性魚種の資源変動に左右されない前浜づくりが重要であることから、昨年から漁業者による独立事業としてスタートしたトラウトサーモン養殖事業がしっかりと軌道にのるための必要な協力を行うとともに、ナマコ・サケ・ウニ・ニシンなどの栽培漁業を推進し、根付資源の維持拡大を図ってまいります。
商工業においては、燃料費や物価高騰による消費の伸び悩みに加え、事業経営者の高齢化が進んでいることなど、町内事業者を取り巻く環境は大変厳しい状況となっております。
こうした状況の打開に向け、地域商工業の総合的な改善発達を図るための組織である商工会をはじめ、昨年、連携協定を締結した小樽商科大学や金融機関などと連携を強化し、産学官金連携による支援に取り組んでまいります。
また、令和8年度に新築移転する「江差町地方卸売市場」の経営安定化に向けた側面的支援を行ってまいります。
(3)不幸ゼロのまちの実現
家族、コミュニティ、社会のあり方が変容する一方で、物価高騰などの社会的環境も住民生活に大きな影響を与えています。こうした状況にあっても、当町の強みである「地域力」を活かし、特に福祉やコミュニティ分野において、町民と行政による協働のもと『不幸ゼロのまち』の実現を目指してまいります。
地域福祉につきましては、令和9年度から始まる「第6期江差町地域福祉計画」の策定に向け、江差町社会福祉協議会を始めとする地域福祉を支える関係団体等と連携し、地域での支え合い、助け合いにより、誰もが安心して暮らせるまちづくりを進めてまいります。
子育て支援につきましては、子育て世帯の負担軽減を図るため「子育て世帯の新築・中古住宅購入助成」「子どもの未来応援事業」などの支援施策を継続してまいります。
性の多様性を認め合う社会の実現や理解促進に向けては、「江差町性の多様性の尊重に関する条例」による取り組みを引き続き推進してまいります。
次に高齢者福祉についてです。
当町は今、大きな人口構造の変化の中にあります。高齢化の進展に伴い、介護や生活支援ニーズはますます多様化・複雑化しております。
こうした時代だからこそ、「支える側」「支えられる側」という関係を超え、地域全体で支え合う「地域共生社会」の実現を目指してまいります。高齢者が住み慣れた地域で、尊厳を持って暮らし続けられるまちづくりを高齢者福祉政策の柱として推進してまいります。
第10期高齢者福祉計画・介護保険事業計画の策定につきましては、将来の介護需要を的確に捉え、地域実情に即した計画を策定し、制度の安定運営を図るとともに、地域包括ケアシステムをさらに深化させ、医療・介護・予防・生活支援が一体となった体制を強化してまいります。
地域共生社会の実現には、行政だけでなく、地域住民、団体、ボランティアなど、皆さまの力が不可欠です。住民主体の活動を支援する新たな仕組みを創設し、通いの場や生活支援活動の充実を図ってまいります。
これからの高齢者福祉は、「制度の充実」と「地域の力」の両輪によって支えられるものです。地域全体で協力し合いながら、高齢者が活力に満ちた活動ができる、江差らしい地域共生社会の実現を図ってまいります。
住民の健康づくりにつきましては、これまで展開してきた地域医療の確保、子どもや高齢者の予防接種事業、不妊治療助成等の取り組みを継続し、住民に寄り添いながら不安や負担の軽減に努めます。
特定健診等の受診率向上や保健指導の充実を図るとともに、当町と包括連携協定を締結しているサツドラホールディングス株式会社の協力の下、歯科健診を促進する事業を実施してまいります。
また、2歳までにほぼ全ての乳幼児が感染すると言われる呼吸器感染症「RSウイルス感染症」の発症リスク低減のため、令和8年度より予防接種法の定期接種となる予定の「妊婦へのワクチン接種」に対して助成事業を開始いたします。
令和8年度から「江差町いのちを支える計画(第2期自殺対策推進計画)」が始まることから、関係機関等と連携しながら、誰一人取り残されることのない社会の実現に向けて、支援の役割を担うゲートキーパー養成講座などの取り組みを実施してまいります。
地域住民が抱える課題は、高齢、障がい、子ども、生活困窮といった分野別の支援体制では対応しきれないほど、複雑化・複合化しています。今後、これらの課題に対し包括的に支援する体制、いわゆる「重層的支援体制」の構築に向けた検討も進めてまいります。
(4)地域・未来を担う人づくり
教育に取り組む考え方につきましては、「江差町教育大綱」を改定し、これまで推進してきた「子どもたちの誰ひとり取り残さない教育行政を推進する」との方針はそのままに、取り組みの柱を次代に即した内容に見直しております。地域の皆様のご理解・ご協力、ご意見を賜りながら、教育委員会とともに各種の教育施策を推進してまいります。
学校教育につきましては、学力・体力向上の取り組み、特別支援教育の充実、ICT機器活用など新しい時代に対応した教育課題への取り組みなど、子どもたちが将来「江差で学んで良かった」と思える教育環境づくりを進めてまいります。
社会教育や図書館活動につきましては、各種事業や団体などの活動を通じて子どもから成人までの幅広い世代の方々の学習機会の確保に努めてまいります。また、施設の適切な維持管理と利用の促進を図ってまいります。
文化財の保存活用につきましては、開陽丸の調査を継続し、保存・活用に向けた取り組みを進めるとともに、遺跡の国の登録記念物への登録を進めてまいります。また、歴史文化を活かした学校授業や歴史文化基本構想の具現化に向けた取り組みを進めてまいります。
(5)地域を支える社会基盤の整備
住民生活の基盤となる、道路、河川、上下水道等の社会資本につきましては、重要なインフラであり、将来需要を見通しながら、効率的・効果的な維持管理に努め長寿命化を図るとともに、国、道などの関係機関と連携し、安全で快適な生活環境の整備に努めてまいります。
町道及び橋梁事業につきましては、道路改良として「五厘沢山崎線」の第2工区の改良工事、新規の橋梁修繕として「鰔川大橋」の修繕対策に着手するとともに、今後におきましても、日常的な維持管理に努め、安全かつ円滑な交通網の確保に取り組んでまいります。
河川の事業では、災害を未然に防止する、あるいは、被害を最小化する観点から「豊部内川」の河床低下防止工事を引き続き実施してまいります。
上水道事業につきましては、新たに町道柳崎団地中央線の老朽管更新工事を2カ年で実施するほか、円山地区の老朽管更新工事にも着手してまいります。
今後におきましても、安全で安心な水道水を安定的に供給するため、事業の効率化に併せ、経営基盤の強化を進めてまいります。
小黒部地区の一部は厚沢部町の簡易水道の給水区域となっております。令和8年度には、道道乙部厚沢部線歩道拡幅に伴う簡易水道管路移設工事が行われますので、厚沢部町と連携を図りながら、小黒部地区の対象住戸への安定した水道供給を行ってまいります。
公共下水道事業では、管渠の未普及路線整備として、新たに「南が丘地区」の管渠整備工事を実施するほか、「ストックマネジメント計画」に基づき、下水道管理センターや五勝手中継ポンプ場の監視制御設備の更新を引き続き実施してまいります。
港湾につきましては、新たな道の駅整備や道南地域における陸上・洋上含めた風力発電事業の展開、珪石・砕石の輸送、釣り文化振興モデル港としての賑わい創出など、港湾機能の多様化が求められていることから、より安全で効果的な利活用につながるよう取り組んでまいります。
地域防災計画により指定避難所として位置付けられている役場庁舎の機能強化を図るため、役場庁舎における再生可能エネルギーの活用による地域のレジリエンス強化と脱炭素化の同時実現を図るための計画づくりに取り組んでまいります。
町営住宅につきましては、令和7年度に改定した「江差町公営住宅長寿命化計画」に基づき、引き続き、予防保全的な維持管理に努めてまいります。
地域の公共交通につきましては、既存のバス路線を補完する「江差マース」事業を継続し、住民の利便性の向上を図ってまいります。
(6)将来にわたり持続可能な行財政運営に向けて
町が直面している少子高齢化や人口減少、厳しい財政状況の中、さまざまな地域課題の解決や、町民サービスの維持・向上を図っていくためには、デジタル技術の積極的な活用が不可欠となっており、町民目線での行政手続きの簡略化、行政事務の効率化を図るなど、デジタル技術等を手段として活用するデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進してまいります。
地域社会のデジタル化につきましては、国が進めてきた自治体情報システムの標準化・共通化が、令和8年度をもって完了する予定となっております。当町においても、標準化後のシステム環境を前提とした行政運営への円滑な移行を進めてまいります。
次に財政運営についてです。
町税につきましては、きめ細やかな行政サービスを安定的に提供していくために適正な課税と収納率の向上、滞納処分をより一層強化し、歳入の確保に努めてまいります。
令和8年度は、「中期財政運営方針」及び「財政基盤強化に向けた取り組み」の最終年度となります。
多様な住民ニーズや行政課題に対応する一方、地域を活性化する各種の施策を講じながらも、収支が均衡した予算編成が可能となる持続可能な財政の構築を目標に掲げ、この間、歳入・歳出両面において取り組みを進めてまいりました。
しかし、全国的な社会経済状況に目を向けますと、エネルギー価格等の物価高騰が長期化し、公共工事費や人件費、さらには、高齢化による社会保障関係経費が増加しており、当町における一般財源支出を大きく圧迫する要因となっています。
令和9年度以降における新たな「中期財政運営方針」及び「財政基盤強化に向けた取り組み」の策定を進め、効率的な行政サービスの執行と財政の健全性の確保に努めてまいります。
その結果、令和8年度予算は
一般会計、 80億1,300万円 (前年度当初比19.0%増)
特別会計、 21億9,410万6千円(前年度当初比 5.7%増)
水道事業会計、6億9,823万6千円(前年度当初比 1.0%増)
公共下水道事業会計、6億 809万9千円(前年度当初比17.3%増)
となったものでございます。
令和8年度は、災害や暮らしに必要な情報を町民の皆様に瞬時に発信できる「防災情報伝達システム」の運用が開始されるほか、令和9年度の新たな道の駅の開業に向けた工事が進んでいることに加え、檜山沖の洋上風力発電事業が事業者公募へ向かうなど、江差町のまちづくりの新たな一歩を踏み出す年となります。
「現世(げんせ)を忘れぬ久遠(くおん)の理想」
これは、早稲田大学校歌の一節で、町政運営を担うにあたって、私自身が大切にしてきた理念です。人口減少や少子高齢化、産業の担い手不足など、厳しい現実を直視しつつも、江差町の持つ魅力を最大限引き出し、明るい未来に向けて理想を追い求めることに奔走してきた11年半でした。3期目最後の年となる令和8年度も、民間企業や各種団体、町議会、町職員、そして町民の皆様と力を合わせて、全力で町政運営にあたっていくことをお誓い申し上げ、令和8年度の町政執行方針といたします。