令和8年第3回江差町議会定例会の開会にあたり、4期目の町政運営を担うにあたっての所信の一端を申し上げます。
さきの7月12日に執行された江差町長選挙におきまして、多くの町民の皆様からの力強いご支持をいただき、4回目の当選を果たすことができました。3期12年間の取り組みと今後4年間のまちづくりについての一定のご評価をいただいたものと理解しておりますが、長きにわたり町長という立場を続けると、気の緩みや慢心が生まれてしまいます。今一度、初心に立ち返り、町民の皆様の声に耳を傾け、町民の皆様とまちづくりのさまざまな問題意識を共有しながら、謙虚に、緊張感をもって、公約で掲げた政策を着実に実行に移してまいります。町議会議員の皆様並びに町民の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。
ここに、今後4年間にわたって町政運営の舵取りを担当するにあたり、私のまちづくりに関する基本的な考え方を申し上げます。
次の4年間は、新しい道の駅の開業と檜山沖で計画が進む洋上風力発電事業をどれだけ地域経済の活性化に繋げることができるかが大きな課題となります。
DBO方式により施設整備及び運営を一体的に行う(仮称)道の駅「江差かもめ島」につきましては、令和9年度の開業に向け、現在、建設が進められています。事業者グループと密接に連携を図りながら、道の駅を核とした町内の観光施設や商店街などを周遊して楽しんでいただける仕組みづくり、地元の農水産物を活用した新商品の開発など町内の経済に好循環をもたらし、新たな「まちの顔」として観光客のみならず町民の皆様にも愛される施設となるよう整備を進めてまいります。
また、道の駅と連携した観光振興対策としては、歴史的風致維持向上計画の策定に取り組んでいるところであり、計画に基づいた国の補助制度を活用し、開陽丸記念館の展示リニューアルや「いにしえ街道」などを含めた地域の魅力向上に繋がる取り組みを進めてまいります。
檜山沖洋上風力発電事業につきましては、昨年7月に、檜山沖が再エネ海域利用法に基づく「促進区域」に指定され、早期に事業者公募のフェーズに進んでいくことが期待されていましたが、現状では、事業者公募の開始時期は2028年冬以降となる見通しです。
しかしながら、洋上風力が、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた切り札であることには変わりありません。すでに、北海道電力では、洋上風力発電等のメンテナンス人材を育成するためのトレーニングセンターを道内で初めて檜山地域人材開発センター内に設置する計画を進めております。来るべき事業者公募に向け、檜山沖洋上風力発電事業による江差町への経済波及効果を最大化するため、地域内連携組織として「江差町洋上風力推進プラットフォーム」を通じ、官民連携しながら、地域の産業振興や新たな産業の創出などに取り組んでまいります。
再生可能エネルギーの活用に関しましては、今年度、「江差町地域再エネ導入マスタープラン」及び「江差町地球温暖化対策実行計画[事務事業編・区域施策編]」の更新を行うこととしており、エネルギーの地産地消や、地域新電力会社の設立を視野に検討を進めてまいります。
また、森林カーボンクレジットを活用し、環境価値の資金化と地域資源の循環を進めてまいります。
平成26年8月に町長に就任して以来、人口減少、少子高齢化が進行する中にあっても、町が抱える課題の解決を図り、誇りある暮らしを未来へ紡ぐ持続可能なまちづくりの実現に向け取り組んでまいりました。私は、これからの4年間はこれまでの延長線上の行政運営にとどまることなく、次世代のためにその取り組みを進化させていきたいと考えており、地区別のまちづくり懇話会を開催するなど、町民の皆様と町が抱える課題を共有し、ご意見を伺う場を設けながら、まちづくりを進めてまいります。
(1)産業の振興
基幹産業である一次産業を取り巻く環境は非常に厳しい状況にありますが、安定した経営が続けられるよう取り組みを進めてまいります。
農業では、家族経営を主体としつつも、地域おこし協力隊員の増員を図り、担い手確保に努めてまいります。また、北部地区における道営の基盤整備事業を着実に進めるとともに、ICTを活用したスマート農業を推進し、生産効率の向上を図るとともに、農業経営の安定化に向けた各種取り組みを実施してまいります。
林業では、森林の有する多面的機能が持続的に発揮されるよう、適正かつ計画的な森林整備を進めてまいります。また、町有の既存施設を活用し、地場産のヒバを原料に使ったクラフトジンの開発に挑戦してまいります。
漁業では、漁業生産の拡大と経営の安定化を図るため、回遊性魚種の資源変動に左右されない前浜づくりが重要です。トラウトサーモン養殖事業をしっかりと軌道にのせ、さらに拡大していくため、必要な支援を行うほか、引き続き、ナマコ・サケ・ウニ・ニシンなどの栽培漁業を推進してまいります。加えて、高級食材として知られる岩ノリの漁獲量拡大を目指し、ノリ養殖試験の取り組みを支援してまいります。
また、ブルーカーボンの取り組みとして、今年度、北海道大学水産学部に委託し、前浜の海中の地形や藻場の状況の調査を行っており、調査結果を踏まえて、ひやま漁協などとも連携し、藻場の造成に取り組んでまいります。
商業の分野では、経営者の高齢化が進んでおり、後継者対策・事業承継が大きな課題となっています。昨年度、包括連携協定を締結した小樽商科大学や江差商工会などとも連携しながら、事業承継を支援してまいります。
町内の商店街では空き店舗が増加しており、とりわけ上町における飲食店街機能の低下は観光振興の面でもマイナスの影響を与えています。今後の洋上風力発電に伴う工事関係者等の人流増大を見据えて、上町の飲食店街機能の維持を図るとともに、新しい道の駅とも連携した商店街の振興を図ってまいります。
多くの分野で後継者不足、人材不足が深刻な状況となっています。農業分野にとどまらず地域おこし協力隊員の増員など外部人材の積極的な活用を進めてまいります。
(2)教育子育て支援
これまで、「子どもへの投資はまちの未来への投資」という考えのもと、高校生以下の医療費の無償化、中学生以下幼児を含めた給食費の完全無償化、江差町子どもの未来応援事業による学習塾や通信教育費、習い事や部活動などの経費への支援、北部2保育園の統合、子育て世帯の住宅新築や中古住宅の購入への支援など、子育て世帯への支援に取り組んでまいりました。
引き続き、これらの取り組みを継続するとともに、新たに保育園及び認定こども園における保育料の完全無償化と、中学校の修学旅行費、制服購入費の補助も実施してまいります。特に、中学校の修学旅行につきましては、学校や保護者の皆様とも話し合いながら、将来的には、語学力の向上と海外での多文化・多言語・多宗教体験を通じた子どもたちの人生のきっかけを作り、江差を外から見つめ直す視野を養う機会とするため、海外への修学旅行も含め検討してまいります。
道立江差高校につきましては、令和8年度の入学者が34人となり、間口の維持を図る意味でも危機感をもって受け止めているところです。地域に必要とされる学校として江差高校の魅力を高めていくことが重要であり、所在町として、江差高校や北海道教育委員会とも連携を図りながら、特色ある教育への支援を行ってまいります。
(3)「不幸ゼロ」のまちのさらなる推進
マイナス要因のゼロ化を目指す「不幸ゼロ」のまちは、町民と行政が近く、町内会や団体活動が盛んな江差町だからこそ目指すことができる目標であり、引き続き、町民の皆様が安心していきいきと暮らし続けられる環境を整えてまいります。
「移動困難者ゼロ」の取り組みとしては、令和6年度に、路線バスを補完する公共交通サービスとして、「江差マース」の本格運行がスタートしました。引き続き、地域公共交通の維持確保と利便性の向上を図るとともに、高齢者バス助成については、函館市など町外へのバス利用にも拡大を図るなど、高齢者の外出支援に努めてまいります。
「交通事故死ゼロ」の取り組みにつきましては、引き続き、江差警察署、檜山振興局などの関係機関、江差町交通安全運動推進協議会などの各種団体と連携を図りながら、交通安全の普及啓発に努めており、令和8年7月末で、江差町における交通死亡事故死ゼロは1700日を超えました。取り組みを継続するとともに、新たに未就学児、小・中学生の自転車ヘルメット購入助成制度を設け、努力義務となっているヘルメット着用の推進と自転車乗車時の安全の確保に努めてまいります。
「孤立死・孤独死ゼロ」の取り組みにつきましては、地域の見守り体制として、地域の商店や団体などが加盟する「見守りチーム江差」が中心的な役割を担っており、加盟店舗数は、令和8年7月末で、130店舗となっています。引き続き、活動の普及、加盟店舗の拡大を図ってまいります。
不幸ゼロの取り組みについては、他の施策も含め、役場内において課題整理を行い、各種機関や団体、企業とも連携を図りながら、地域全体で不幸ゼロの理念を共有できるよう、広報・啓発や研修などを行なってまいります。
まちづくりを進めていく上で、財政基盤を強化し、収支の均衡を図っていくことは避けて通れません。エネルギー価格等の物価高騰の影響が長期化し、加えて公共工事費や人件費、社会保障関係経費が増加する一方で、人口減少の影響もあり、地方税収や地方交付税をはじめとする一般財源がその増加に追い付いていないのが実態です。
令和9年度以降における新たな「中期財政運営方針」及び「財政基盤強化に向けた取り組み」の策定を進め、時代やニーズの変化に柔軟に対応できるよう、従来の枠組みにとらわれることなく事務事業の見直しを進め、財源の最適配分を徹底し、効率的な行政サービスの執行と財政の健全性の確保に努めてまいります。
また、財政基盤の強化を図る上では歳出の抑制を図るだけではなく、国や北海道などの補助制度の活用など財源確保を徹底するとともに、ふるさと納税や企業版ふるさと納税などによる歳入の増加も図っていく必要があります。とりわけふるさと納税に関しては、新しい道の駅の事業者とも連携を図り、新たな商品開発を進め、年間のふるさと納税額5億円を目標に歳入の増加を図ってまいります。
人口減少や少子高齢化、産業の担い手の不足など、江差町にとって厳しい状況が続いています。そうした中でも、新たな道の駅の開業や、洋上風力を中心とした再生可能エネルギーの活用、ふるさと納税を生かした農漁業の推進など、地域産業の活性化につなげる取り組みを積極果敢に進めていくつもりです。
私は、江差町出身ではありません。それどころか、北海道出身ですらありません。しかし、だからこそ見えているものがあります。それは北海道の魅力、江差町の魅力です。私は江差町に魅力を感じてこの町で生きていくことを選択しました。
町民の皆様の中には「江差町には何もないからね」と嘆く人がいます。本当にそうでしょうか。
農業があります。毎年、「江差産のアスパラは日本一だ」と言ってふるさと納税をしてくれる人がいます。
漁業があります。毎年、「江差産のノリでつくったのり弁を食べたい」と江差を訪れてくれる人がいます。
祭りがあります。毎年、「観光客を呼ぶためにつくられた祭りじゃない。本物の祭りだ」と言って参加する人がいます。
江差追分があります。毎年、江差追分愛好者との交流が楽しみで本州から訪れてくれる人がいます。
自然エネルギーがあります。檜山沖で計画されている洋上風力発電事業の発電量は原発1基分にもなり、地域産業の活性化に寄与することができます。
江差町のこうした魅力を地域経済の好循環につなげる取り組みは、まだ道半ばです。
そして何よりも、江差町には、この町のことを思い、町のために行動してくれるたくさんの町民の方々がいます。それが一番の強みです。人口減少、少子高齢化、過疎化と嘆くにはまだ早いです。私は次の4年間も、江差町の発展のために町民の皆様とともに戦い続けます。
町長は非常にやりがいがある立場です。ただその一方で、町長の持つ予算権や人事権は江差町にとって強大です。長く務めるとこうした権限を乱暴に行使しがちです。私自身はこうした権限を長期に持ち続ける立場でいることには慎重になるべきだと考えていました。そのため、4期目挑戦に迷いがあったことも事実です。昭和30年に旧泊村と合併して今の江差町になって以来、4期務めた町長は、本田義一さん1人だけ。4期目を務めるにはそれだけの覚悟と責任が必要だと感じています。
12年前の町長に就任した日、これから政治家を務めていくことに向け、3つの政治信条を貫くことを自分自身に課しました。
1、弱者、少数者に優しい政治
2、町民との対話を大切にする政治
3、30年後を見すえた政治
厳しい立場にある人たちに常に寄り添いながら、小さな子どもからご年配の方々までの町民一人ひとりの声に真摯に耳を傾け、将来に責任ある判断をしていく。今後もこのことを忘れずに日々の職務にあたってまいります。
そして、4期目となる次の4年間はこれまで以上に謙虚さを忘れず、おごらず、常に丁寧に、誠実に、町職員と一丸となって「進化する江差町」を目指して町政運営にあたってまいります。引き続き、町民の皆様、町議会議員の皆様、各団体や企業、大学の皆様のご協力をよろしくお願いいたします。
以上、今後4年間の中で目指していく町政運営の一端を申し述べ、所信表明とさせていただきます。